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慣らし運転

1000キロまではおとなしめに走ってください、と納車の時に言われた。最初はフルスロットルで走るようなことはしないでくださいね。

先輩に連れ回されて5000回転を超えそうなことがあった。周りが80キロで流している道だった。これが排気量の違いからなのか5000回転の制限があるからなのかわからないけれど、新しいエンジンに無理をさせようとするのは勘弁して欲しかった。ただうるさいだけのマフラーにアフターファイアをなびかせて、走らないか、走らないかと毎晩のように誘ってくる。僕は走りたいんじゃなくて旅行に出たいだけなのに。丸目のガチョウについていこうとは思わない。90年代の走り屋を引っさげたまま走りたくない。つるむために走りたくない。すり抜けをしてミラーに間抜けな傷をつけたくない。

1人で走っていると路面に意識が集中する。体の疲労とか、背負ったバックパックの重さなんてどこ吹く風、時速60キロでも1つの事柄に全神経が集まる面白さを感じた。脇をビュンビュン抜かしていく400ccのバイク便や銀行員のスーパーカブに気を取られることはなかった。

列車やバスに乗って移動していると流れる景色をぼうっと眺めているか、何か暇つぶしをしなければならないけれど、バイクはその景色を集中をもって流すことができる。自分が機械を司っているのだから、当たり前といえば当たり前だけれど。