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大学生のソロツーリング入門

私がオートバイを買ったのには「乗り物を自分で運転する旅を経験しておきたい」という理由があった。電車やバスに乗っているとメシを食う、眠る、考え事をするの繰り返しになってこれはこれで面白いのだけれども運転していればメシは食えず、眠れず、考え事をしていたら事故を起こす。去年あたりはそう考えていた。本当にそうなるのだろうか?

 
運良く今夏は2週間ほど西日本をツーリングする機会に恵まれた。山陽山陰そして四国……1日に下道だけで600キロを走るような日もあった。当然渋滞もあるし、「越波注意」の看板がある道で波しぶきを浴びたりもした。しかし意外にもオートバイで走りながら考え事をする、ということはできた。交通法規を守り、前の車が遅くとも車間距離をあけていれば自然に心の余裕が生まれ、そこから周りの景色をちらちらと盗み見するように見、アクセルをひねりながら物思いにふけり、県域FMのMCやDJの喋る言葉の中で気に入ったものがあれば次の休憩でメモをとっていた。この作業はかなり楽しいものだった。
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そもそも行きずりの関係が多い旅という行動に私の性格が合っていたのかもしれない。長距離列車の中でお寒いですね、どこまでいかれますか、列車に乗ってポルトガルまで、そうでしたか、お互い気をつけていきましょう、という他愛もない会話はオートバイに乗ったとしてもほとんど変わらない。Ninjaかっこいいですね、どちらまでいかれますか、フェリーに乗って北海道まで、ではお互い安全運転で……。それっきり一生会わないだろう人間に話しかけ、別れればまるで何もなかったようにエンジンを始動させる。遠くから来たからといって特別扱いはされない。観光地の駐車場にオートバイが並んでいてもライダー同士の会話が弾むとは限らないし、互いの存在がないかのように振る舞うこともある。列車の旅と違うのはこの部分だろうか。日本人同士、シャイなところが表立っていると言えばそれまでだが旅行中の解放的な気持ちをもってしても克服できない。どちらにしろ旅の関係が一生の友、将来の伴侶となるのは異例中の異例なのだから躍起になってやたらめったらに話しかけると白眼視され、行きずりの関係すら危うくなる。
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関西のライダーのたまり場にも行った。関東でいえばそれぞれエバグリのような場所と奥多摩のような場所だ。「東京から来なはったんやって」と言ってもらっても彼らがかわいいと思うのはそれぞれのオートバイだ。俺のバイク撮ったってや、とおどけられて何枚か写真を撮ったがそれを後で送ってくれとは言われなかった。
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新鮮味はこれまでよりもかなり疲労がたまるということにあった。日中ほとんど同じ体勢を保つのだから当然だ。眠っている間に遠くまで来てしまったという驚きはあるはずもないが、今日1日を有効に使ったという満足感は手軽に得られる。1日の終わりに日記をつける余裕はなくなったけれども休憩中のメモを読んで後で思い出せば良い。あとは地図を見て、スマホをいじりながら明日の目的地を決めれば良い……。
 
子供の頃は寄るたびにワクワクしていたSAやPAもソロツーリングでは心動かされることはなかった。人っ子ひとりいない地方の小さなPAだけでなく、人気のあるSAでも旅行中なんだと自覚することはなかった。それよりも下道のコンビニやドライブインや道の駅の方が、ああ俺は遠くへ来たのだと思えることが多かった。
 
オートバイは素晴らしい。4輪の旅にも興味が沸いてきた。2輪免許をとってから幾度か妄想しているのが軽トラの荷台に幌をつけ、中に布団を敷いて夜にはどこかに車をとめて荷台で眠る旅行だ。明日からは教習所の教官を急かすことにしよう。