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ウィンブレ

新しいウィンドブレーカーを買った。

今使っているものは中学校で野球部へ入ったのと同時に買ったものだ。

破れた場所を縫いに縫い、だましだまし着てきたがとうとう風を通すようになってしまった。

もはや意味がないから、福袋でも売れなかったおこぼれを安く買おうとスポーツ用品店に足を運んだ。

1万円の福袋を買って、そこからウィンドブレーカーだけを使うことにしてもいいのだけれども、余計なものを処理するのに困るから、おこぼれだけにした。

ナイキの軽いウィンブレが上下セットで8千円で買えたから良しとする。

 

『八甲田山』

この映画を初めて見たのは休学前のことだった。

170分と長い映画だから、講義の合間を縫って見ていた。
本を読むときもそうなのだけれども、間に長い時間を挟んで見るのと一気に見てしまうのとでは、受ける印象が随分と違う。
見る場所も同じように、落ち着いた場所でないと考えなしに読んでしまう。
今回は緊張感漂う図書館の狭いブースではなくて、自室のパソコンに向かって鑑賞したから、真剣に観ることができた。
 
この映画は、実際に冬の八甲田山系や岩木山で撮影されている。
氷点下での撮影や演技は過酷だったろう。
とはいえ、その過酷さがCGや特撮を超えた臨場感を生み出しているのは確かだ。
凍てついた外套、紫色の肌、ホラー映画では作れない現実にある恐怖(例えば、真夜中の防災無線)をよくフィルムに収めたと思う。
その最たるシーンは、兵卒が捕まった木の枝に血を残しながら滑落してゆくところだった。
誰も落ちる兵卒に関心をもたないのだ。
士官はまだしも、自ら望んで軍隊に入ったわけではない兵卒たちはどのような思いで死んだのか。
 
また、多数の犠牲者を出した神田大尉(史実では神成大尉)率いる青森第5連隊と、見事踏破した徳島大尉(同じく福島大尉)率いる弘前第31連隊とが対比されて描かれている。
神田大尉は小隊編成を考えていたが、トレッキングの様相を呈した日帰りの予行演習の結果により、大隊長から中隊編成とすることを命ぜられ、しかも大隊本部と自分の指揮下以外の隊からの兵を率いることとなってしまった。
一方徳島大尉は、連隊長同士の約束(青森隊と弘前隊を八甲田ですれ違わせる)により青森隊よりも大きく迂回して八甲田に突入することとなり、そのため小隊編成、精鋭主義でゆくこととなった。
当然弘前隊に比して格好がつかないことを咎められるのだけれども、行程を示して理由を説明すると、渋々ではあるが承諾された。
 
よく神田大尉の青森隊が「日本的な硬直した組織」と評されるけれども、軍隊はどこの国でも硬直していなければ指揮系統がバラバラとなってしまうから、上官に対してあれこれと言う者は、迅速な行動の妨げになってしまう。
また神田大尉の初めての雪中行軍がトレッキングとなってしまえば、それを見た上官も雪中行軍恐るるに足らずという認識を持ってしまうのも致し方がない。
仮に神田大尉が小隊編成を頑なに主張していたとしても、大隊は聞く耳を持たなかっただろうし、小隊で出発したとしても遠足気分の兵は良くて凍傷を負っていただろう。
徳島大尉は過去、岩木山にて雪中行軍を成し遂げた実績があり、八甲田に対しても用意周到に準備を行っていたし、なぜ小隊編成なのかを上官に説明し、それに納得した。
上官の命令に疑問を呈しながらも認めてしまった神田大尉と、連隊長同士の約束を考慮しつつも、その中で一番リスクの少ない方法をとり、上官もそれに応じたという対比が「日本的組織は柔軟さが欠けていて良くない」という安直な言葉で語られるのは、青森隊の悲惨さを見て出てくる結果論だ。
経験に基づく判断、つまり徳島大尉の成功の再生産が「日本的」でないという理由がどこにあろうか。
ただ自分のいる組織を、『八甲田山』を通して叩いて、それで満足するだけならそれでいいかもしれない。
けれども「日本的組織」にいる自らの経験と通して青森第5連隊を叩く行為はあまりにも下劣だ。
同様に弘前第31連隊を叩いてもらわねばいけない。
 
 

夜間人口

年末年始は、昼間に我が市の夜間人口がどのくらいなのか、埼玉都民がどれくらいいるのか目に見えてわかる。

昼になってからスーパーマーケットへ行くと、平日はお年寄りしかいないはずなのに親子連れがお年寄りも多くいる。

銀行へ行っても、郵便局へ行っても、ホームセンターへ行っても、やはり皆若い(中年だけれども)。

居酒屋でアルバイトをしていても、年寄った常連の姿はなく、見たこともない人たちが席に座っている。

アルバイト先の店はあまり既製品を使わない主義であるから、注文を受けて始めて材料から作り始めるものがある。

予め仕込んだものを冷凍しておき、解凍してから調理し始めるものでも、芯まで火が通るには時間がかかる。

しかも満席となり注文のタイミングが被るのがこの時期のお約束であり、1人で20の商品をつくらなければならない。

店長も社員も同じような状況だし、手伝ってくれる人はいない(私はこのおかげで料理に関しては不器用を克服できた)。

 けれども都民たちは都会の居酒屋になれているのか、時間のかかるメニューと注意書きがあるものでも10分も経つと「まだですか」と訊いてくる(年末はこのあたりで完成まで2分くらい残している)。

無慈悲に急かしてくるお客はあまり気持ちのいいものではない。

 

都民の常連で「仕事場で固まっててもあまり人脈が広がらないから、早めに帰って近所の居酒屋で呑むんです」と語っていたサラリーマンがいるけれども、都民が彼みたいな人であれば多少の遅れは承知してくれるし、シャッター街になった線路の向こうの商店街もある程度賑わうのではないか。

プライベートと仕事場での信頼関係は、私が思うに前者は腹を割って話せるかどうかが重要であって、後者は双方向の連絡の緊密さだと思っている。

果たして飲みニケーションは連絡の緊密さを向上させるか。

あまりにプライベートの悪い部分をさらけ出してしまうと、仕事上はと割り切っていた緊密さも、悪い部分によって瓦解してしまうのではないか。

 

マイルドヤンキーが地元志向だというけれども、その裏は都民が会社での不必要なプライバシー交換大会で、地元の友人たちと遊べないという理由がありうる。

ここらへんのことが書いてある本はないかしら。

探してみよう。

 

埴生の宿

25日に2件の不動産屋を訪ねた。

前もってインターネットで調べたつもりが、最初に訪ねたところで、ああいうところに掲載されるのは何かしら問題を抱えてる物件ですよ、と言われ色々な物件を提示された。

マスクをかけ、顔を真っ赤にして、如何にも風邪をひいているようだったが、なぜかハイテンションで問題のある物件を弾いていって、最終的に5つの物件を勧めてきた。

1Kと伝えたのにワンルームが2つ混じっていたけれども、物件について質問すると1つ1つ丁寧に答えてくださった。

 年末年始は飛ぶように部屋がなくなってしまうようだ。

実際、店舗には隣にブルーカラー風のおじさん、その隣には高校生とその母親の組がいた。

電話もひっきりなしに鳴っていたことから、Iさんの言うことは嘘ではないだろう。

我が家の共通点である呑気さのおかげでこの担当の方(Iさん)の紹介なさった物件を抑えることができないかもしれない。

年始まで残っていることを願うしかなかろう。

 

2件目の不動産屋はひどかった。

私以外お客もいないし、1週間前に条件をメールで送って、了解した旨を返信してきたはずなのに、私が着いてから物件を探し始めたのだ。

家賃や間取りがいい物件が見つかったが、あまり信頼がおけない。

ひょっとしたら大家と仲が良くないのかもしれないし、前の住人がトラブルを起こして退去したかどうかという情報ももらえなかった。

試しに「初期費用はいくらくらいですか」と質問してみたら、電卓もキーボード叩かないで「20万前後」と答えられた。

全部資料に書かれていたのだからちゃんとやってくれてもよかった。

この店は使わないことにした。

 

 

弱小ベッドタウンのタクシー事情

工業団地は言われた、「自家用車あれ。」

こうして、自家用車があった。

 

駅を中心として造成された住宅街には埼玉都民が住み、田畑を遠く乗り越えた国道や県道沿いにある家々には、全国津々浦々から集った、古くからの住民には少し距離を置いて見られる工業団地通いの労働者とその家族が住んでいる。

工業団地へ通うには自動車かオートバイが必要になる。

働き続けるには自家用車を持つしかない。

皆自家用車を持たなければならないから、スーパーマーケットも車がないと行くのが億劫になる位置に建てられる。

駅の近くにスーパーはないし、休日に東京まで出ようとすると1時間はかかる。運賃も馬鹿にならない。

食料を買うために都民も自家用車を用意する。

駅の周りは地主が強いせいで駐車場ばかりになり、駅前はハリボテの都会にすらならない。

ハリボテの都会すらないのだから、居酒屋は国道、県道沿いに店を開く。

仕事が終わって、駅から工業団地から自宅へ、そしてどちらも自動車を駆って酒を飲みに来る。

運転代行は当然儲かるし、ここ5年で私のバイト先の居酒屋がある地域をカバーする運転代行は1社から4社に増えた。

 

しかしタクシーはどうか。

運転代行ばかりに客を奪われ、運ぶ客といえば駅から工業団地へ出張してくるホワイトカラーと隣の市にある場外発売場で競艇に勝った爺さんだ。

当然夜に待機するタクシーの台数は減るわけで、正月盆暮れに都心から里へ顔を出す人は居酒屋から駅へ向かおうとすると、タクシー会社の殿様商売に悩まされることになる。

 

「うちは20時までだ。」

居酒屋に対して前もってこんなことを通知してくる会社もあった。

普段、夜間の利用がほとんどないのだからタクシー会社を責めるわけにもいかない。

せめて駅前にハリボテの都会さえあれば、夜間の利用は少し増えるだろう。

…バイト先は潰れるだろうが。

 

 

 

 

青春供養

大掃除を始める前に、本棚やベッドの下に隠れていた青春の欠片を追い出してしまうことにした。

私のベッドの下にはエロ本の代わりに高校の教科書が山と積まれていた。

ブックオフに持っていったら買取を拒まれてトイレットペーパーになってしまうだろうし、私の青春の価値がもしそうだったとしても受け入れるしかない。

しかし言葉通り他人の尻ふきで終わってしまうのも癪であるから、ヤフオクで売りさばいてしまうことにした。

10冊くらい出品して、開始価格は全て10円にした。

 

落札者が出たら、教科書に何か手紙でも挟もうかしら。