辞めてどうするんだ

聞き飽きた言葉だ。
小学4年生でスイミングスクールを辞めるとき、中学校の野球部を辞めるとき、高校を中退するとき、
何かしらの節目がある毎に教員から、両親から言われてきた。
私は毎度そこで口籠るのだけれども、今回ははっきりとした理由がある。
大学の近所で暮らすのだ。

我が家は埼玉県の北部、北関東と呼ばれてもまったく嫌な顔をされない地域にあるから、大学まで出ようとすると片道1時間半以上かかる。
「その時間で読書できるね」と言われたことがあるが、これは言い方が良いだけで列車の中では読書しかできないのである。
ベッドタウンから東京へ向かう列車は鼠色の背広やワイシャツに埋め尽くされ、そこでは泥のように眠りこけたり、やりたくもないおしくらまんじゅうの中で新聞を読むしか手段はない。
立ちん坊だと体力も使う。
しかも人がいながらも皆孤独だ、これにはほとほと参ってしまう。
通学するだけで気力を使うのに、大学に入れば講義と友達付き合いが待っている。
ならば大学から近いところに住んで気力と体力の消耗を防げばいいのではないか。半分は一人暮らしをしてみたいという願望だが。
幸い、休学していると付き合いも何もないし、バイト先が家からの徒歩圏にあったからほとんど休まずに通え、蓄えがある。

ドロップアウトしないための最終手段として、急ぎ物件を見つけたい。