大臣のムクドリ

私は16時くらいから1時間ほど散歩をするのが習慣になっている。

冬になると日没が16時40分くらいになるから、鳥が寝床に帰る時間と散歩の時間が被る。

電柱のある道へ出ると、スズメやらムクドリやらが電線いっぱいにとまって道へボタボタと糞爆弾を落としている。

犬と散歩をしている人たちは電柱を避けて通るのだが、たまに犬が爆撃を食らったりしているのを私はほくそ笑みながら歩く。

しかし息が白いのがバレるのか、だいたい吠えられてしまう。

いつもすれ違うおばあさんのコーギーが一番優しくてかわいい。主人と似て彼は寡黙なのだ。

 

ベッドダウンと田畑を仕切る川をまたぐと、ぽつぽつ立っている農家とおどろおどろしい森が何箇所か見える。

鎮守の森と"大臣"の邸宅だ。

地域では広い土地を持っていたり、金持ちの家を「名字+大臣」で呼んでいる(過去に政治家を輩出したかどうかは関係ないらしい)。

噂話で場所を示すときに「何々大臣のとこ」と言ったりするのだ。

 

昼間、田んぼでカエルやミミズをつついた鳥たちは日が暮れると森へ帰る。

散歩と経路にある大臣の森にはムクドリとごく僅かにハトが帰ってくる。

ムクドリは堂々と群れをなして木々の間へ入ってゆくのだが、ハトだけはムクドリの邪魔にならないよう端で小さな木にとまろうとバタバタやっている。

その昔、豪農だったらしい大臣たちは今やハトのようなものなのだろうか…

 

と庄屋の栄光と没落の物語を書き始めたいが、実際に彼らは没落などしていない。

私が通っていた小学校に近い大臣は、”好意で”小学校の全児童に枝豆を(1枚までだが)レジ袋に詰めさせていた。

160人前後いたのだが、それに採らせてもまだ出荷するには十分すぎる大豆を育て、稲を刈っていた。

別の大臣でも、やはり大量の米を農協や直販で売ったりしている。

そうでもないと植木屋を呼んでまで森を管理できないだろう。

単純に羨ましい。

 

出来るならば北海道で農家の弟子にでもなって農場を継ぎ、ホクレンの顔を伺いながらも悠々自適の生活をおくる農家になりたいものである。